2011年09月30日
2011年09月24日
ハックルベリィ・フィンの冒険(マークトウェイン)

マークトウェインのハックルベリィ・フィンの冒険
読んだことある人はどれくらいいるだろうか。
トム・ソーヤの冒険が、テレビアニメで人気を博し、ちょうどぼくたちの世代は、再放送も含めて何回も見た経験があるだろう。
ただ、小説となると、案外読んでいないし、さらに、ハックルベリィ・フィンの冒険を読んだ人は案外少ないのではないか。
そういうぼくも、本棚には買って並べていたが、先日読書会で取り上げることになり、ようやく読むことになった。
読むことになったきっかけは、池澤夏樹の「世界文学を読みほどく」という本に、いくつかの世界文学が取り上げられていて、そのなかに、ハックルベリィ・フィンの冒険が解説されていて、池澤氏の解説に惹かれたということもある。
それと、読むきっかけになった最大の要因は、ヘミングウェイが、ハック〜の出版後50年に、以下のような言葉を述べていることを知ったからだ。
アメリカの現代文学はすべてマーク・トウェインの「ハックルベリー・フィン」という一冊の本から出発している・・・それ以前にはなにもなかった。それ以後にもこれに匹敵するものはなにもない。
初めて、ハックルベリィ・フィンの冒険を読んでみて、これはすごい小説だな、と思った。のちに影響を受けた作家が多いのも納得できる。初版が1885年なので、日本では明治18年。夏目漱石の吾輩は猫であるが、1905年だそうなので、その文学としての完成度の高さには驚かされる。
いつの時代もそうかもしれないが、目まぐるしく様相が変化する現代において、とくに閉塞感でいっぱいの日本で、ハック的生き方というものを捉えなおしてみることも面白いのかもしれない。
![]() | トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)著作者:マーク・トウェイン 出版社:新潮社 価 格:580 円 |
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2011年09月15日
ドストエフスキイ(埴谷雄高)

いま僕が、電車の中と寝る前に読んでいるのが埴谷雄高の書いた<ドストエフスキイ>だ。
『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』をじっくりと再読するために買って読みはじめたが、非常に面白く書かれていて、埴谷雄高の文章もいい。
小林秀雄のドストエフスキイの生活だったか、それも知人から貰ったままさらっと読んだっきりだったので、改めて読み直してみたい。亀山氏の書いたドストエフスキーの解説本も面白かった。1860年代、1870年代の文学者、小説であるのに、なんと新鮮な感じがするのだろうという不思議な想いだ。
![]() | ドストエフスキイ―その生涯と作品 (NHKブックス 31)著作者:埴谷 雄高 出版社:NHK出版 価 格:914 円 |
2011年09月09日
飢餓海峡(水上勉)

飢餓海峡は、水上勉が書いた快作だ。
小説を読んでいないひとはぜひ、土日に時間を作って読んでみてほしい。
小説は、ほとんど完璧に仕上がっている。
そして、映画はというと、
以下は、以前見た映画の感想。(ちょっと辛く批評してしまった)
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正直イマイチだった。
三国連太郎は、よかった。
何がいけなかったのか、原作を読んでいるので、ストーリーのあらましは知っているわけだが、それが仇となったのか、冒頭から説明が過ぎてしまい、なにか弁士による無声映画を見せられているような、紙芝居を見せられているような、そんな感じがした。
しかし、説明がなければ、話の筋も掴めないかもしれないので、なんともはがゆい感じがするが。
それから、ほぼ原作通り、津軽海峡での遭難事故、大火、杉戸八重の十年、犬飼多吉の十年と犯罪、が網羅されており、平均的に描かれている点では筋が分かりやすかった半面、どうしても伝えたいところがどこなのか、監督の思いが希薄になってしまった感が否めない。
いっそのこと、前半の遭難事故と大火あたりははしょってしまい、十年たった今と、犬飼多吉の歩んだ壮絶な前半生をもっと深く描いた方がよかったのかもしれない。
もちろん、八重だって壮絶な前半生を生きているわけで、どちらの立場にたったとしても心を打つ作品には仕上がると思う。
原作を読んだかぎりにおいては、飢餓海峡は、津軽海峡を指すだけではなく、犬飼多吉こと樽見京一郎の、虐げられた故郷での極貧の生活、北海道の過酷な自然条件に涙をのんだ開拓生活。そのすべてが、かれの飢餓海峡であり、八重の前半生もまた飢餓海峡の連続でもあったということだと感じる。
ラストシーンでは樽見京一郎(三国連太郎)が、津軽海峡を渡る連絡船の上から海上に身を投げて終わるのだが、なんともいえない後味の悪さだけが残るだけで、三時間の映画の中に、ぼくはどこにも救いの光を見つけることができなかった。
![]() | 飢餓海峡 (上巻) (新潮文庫)著作者:水上 勉 出版社:新潮社 価 格:746 円 |