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Posted by さがファンブログ事務局 at 

2012年06月11日

おろしや国酔夢譚(井上 靖)

おろしや国酔夢譚 (徳間文庫)

おろしや国酔夢譚 (徳間文庫)

著作者:井上 靖

出版社:徳間書店

価 格:489 円



佐賀の実家に帰ったときに、本棚から掴んだ一冊。
井上靖といえば、『氷壁』くらいしか読んだ事がなかったが、一昨年に、文学読書会で短編を読むことがあり、『木乃伊』とか『補陀落渡海記』とか、少しずつ井上靖文学に触れるようになった。

以下、ウィキペディアのあらすじを引用すると、

天明2年(1782年)、伊勢を出発し、光太夫ら17人を乗せた船「神昌丸」は、江戸へ向かう途中に嵐に遭い、舵を失って漂流中に1人を失いながらも、8か月の漂流後に当時はロシア帝国の属領だったアムチトカ島に漂着した。この島で7人の仲間が次々と死んでいくが、残った9人は現地のロシア人の言葉やアムチトカ原住民の言葉を習得しながら帰国の道を模索する。漂着から4年後、現地のロシア人たちと協力し流木や壊れた船の古材を集めて船をつくり、カムチャッカ半島のニジネカムチャック(Nizhne-Kamchatsk)へ向かう。だがここで待っていたのは島とは比較にならない厳しい冬将軍で、さらに3人を失うのであった。

本作は、緒方拳、西田敏行の出演による映画化もされていて、いつか映画も観てみたいものだと思った。  

Posted by なみログ at 07:14 | 文学(日本)

2012年05月21日

北アルプスから来た刑事(梓林太郎)

北アルプスから来た刑事 (光文社文庫)

北アルプスから来た刑事 (光文社文庫)

著作者:梓 林太郎

出版社:光文社

価 格:800 円



北アルプス来た刑事。
佐賀の実家に帰ったときに、家にあった本の中から一冊拝借してきた。

ストーリーはというと、常念岳で登山家の死体がみつかり、そのジャケットに靴の足跡がついていたというところから、登山靴のソールの型から持ち主を探し出すところからはじまり、また、登山家と同居していた女性が、今度は北海道で遺体で発見されるということから、連続殺人事件へ。
また、足跡の靴が特定されるのだが、その靴の持ち主は、靴を家の外壁に干していたら盗まれたといい、盗まれた二足のうち、一足は常念で死んだ登山家の背中に跡をつけ、もう一足は、なんと、別の殺人事件の家に残された侵入者の足跡と同じ型だった。

果たして犯人はだれか?そしてその動機は?

普段はほとんどミステリは読まないのだけれど、十分に楽しめた。特に凝った謎解きがあるわけではないが、次から次へと被害者の鑑が連環していく流れは、先に先にとページをめくる楽しみがあった。
それと、北アルプスの上高地から涸沢、穂高などの山の描写も楽しめて面白かった。

梓林太郎氏の本は初めて読んだけど、ほかのも何冊か読んでみようかな。  

Posted by なみログ at 10:52 | 文学(日本)

2012年04月05日

海峡の光(辻仁成)



海峡の光 (新潮文庫)

海峡の光 (新潮文庫)

著作者:辻 仁成

出版社:新潮社

価 格:420 円



海峡の光。

芥川賞受賞作品ということもあり、数年前に読書会で取り上げたが、そのときどのような議論になったのかおもいだせないでいた。

改めて昨日、読み直した。
想像していたより、読ませる。
内容が、である。

絶えず緊張感のある心理描写があり、思わず読み進めてしまう。

二人の関係はどうなるのか?花井はどうなるのか?と。

函館や、津軽海峡、船の訓練の描写も素晴らしく、読みごたえのある作品だった。

軽いタッチのセンスのいい作品が好きな方には、重いので、耐えきれないかもしれない。  

Posted by なみログ at 22:54 | 文学(日本)

2012年03月07日

眉山(太宰治)

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)

著作者:太宰 治

出版社:新潮社

価 格:540 円



2002年9月に書いた独読日記から再掲。

『眉山(太宰治)』※グッド・バイに収録されている。

眉山とあだ名をつけられた飲み屋の女中。主人公である僕たちが飲み屋に行く度に、彼女はかいがいしく彼らの世話をするが、彼たちが呼びもしないのに、彼らの輪の中に入り、いつのまにか話しに加わってしまうことや、どこかピントのずれたその様子に、僕たちは彼女を嘲りの目でも見つめている。
物語の終り、久しぶりに飲み屋にいったというある人物と僕は出会い、眉山がいないことを聞かされるが、眉山が腎臓結核を患っていたこと、彼女がかいがいしく振舞う姿にどこかぎこちなさを感じたり、おしっこをもらしたことがあったということなどが、全て腎臓結核のせいであったということを知らされる。
短くて、本当にあった話を下敷きに書かれていると思う小説だが、文章のうまさもさることながら、最後になって眉山の病気の真相が伝えられたときの僕の心象など、さらっとした表現のなかにも胸を打つものがある。  

Posted by なみログ at 06:39 | 文学(日本)

2012年03月05日

蛇を踏む(川上弘美)

2002年12月に書いた独読日記より再掲。

蛇を踏む (文春文庫)

蛇を踏む (文春文庫)

著作者:川上 弘美

出版社:文藝春秋

価 格:440 円




現在旬の作家の小説を題材にしようということで、「蛇を踏む」を読書会で取り上げた。読書会の主旨に「たまには小説を読み込んでみよう」というのがあり、「読み込む」ことなしには会が成立しないのだが、果たしてどう「読み込めるか」。読み手が試されているような作品である。小説は必ずしも「読み込む」ことが必要かどうかという問いも含めて。

主人公のサナダさんは数珠屋さんの店番をする女性で独り暮らし、彼女の家に母と名乗る「蛇」が突然居座ることになるのだが。。

「蛇の世界は暖かいわよ〜」と蛇はサナダさんを自分の世界に引き込もうとするが、彼女は「蛇の世界」に惹き付けられるところもみせるが、拒絶感も抱いている。結局「蛇の世界なんてないのよ」ときっぱりと断言するのだが、「蛇の世界」とは一体何であろうか。
僕は「蛇の世界」というのは、もっと人(ここでは蛇も)と人が密接に付き合って生きていくような世界だと解釈し、「蛇の世界」ではないサナダさん自身のこれまでの生き方は、人づきあいについて距離感を保とうとしてきた生き方ではなかったかと思う。そういう自分を肯定して生きてきたが、だがもっと周りの人たちのように、べったりとした人と密接に触れ合っていくような、そんな自分になりたいとも思っている。
現代人の対人関係の距離感を描いているのかと。

「蛇の世界」に行くのか、「今の世界」にとどまるのか、といっちゃうと、ずっと以前のこの日記にも書いた(※ずっと下を参照)、村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」のパロディかということになるが(笑)、この作品の押しの弱さをあえてあげるとすれば、「蛇の世界」とそれに対する「今の世界」の、双方の提示の仕方に深みがないかなーと思う。ただ作者がそこまで考えて書いているかどうかは疑問。

ところでこの作品の中に出てくる蛇について読書会の参加者は、リアルな蛇を思い浮かべるということだったが、僕は「水玉模様やパステルカラー」の蛇をイメージした。怖くなんて全然ないと(笑)。作者のイメージは僕に近いんじゃないかと思うんだが。違うかなー。  

Posted by なみログ at 14:57 | 文学(日本)

2012年02月25日

13階段(高野和明)

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

著作者:高野 和明

出版社:講談社

価 格:680 円



47回江戸川乱歩賞受賞作品。
ずいぶん前に買っていて、どこに行ったかわからなくなっていた本書が、無造作に詰まれた本の中から見つかったので、読み始めた。

話の筋はとても面白そうだ。はてさて、どのような展開なるのか。

文庫版の解説に宮部みゆきさんが書いていて、映画の評価があまり芳しくなかったと書いてある。映画も気が向けばDVDで見てみようかと思う。

※話はそれるが、宮部みゆきさん原作の『模倣犯』の映画は??だった・・
※話はそれるが、車谷長吉さん原作の『赤目四十八瀧心中未遂』の映画も??だった・・  

Posted by なみログ at 10:14 | 文学(日本)

2011年12月14日

グロテスク(桐野夏生)


意外に興味深いかもと思ったのは、チャンの境遇の話の部分だ。

中国の内陸部から広州へ出る汽車の中の話や、日本へ密航してきた部分の話は、僕があまりにも知らないだけだったかもしれないが興味深く読んだ。


チャンがユリコと出会い、殺害するに至る過程があまりにもあっけなさすぎる印象を受けたが、ユリコのあのような冷淡な態度は案外リアリティがありそうだ。
まだ読んでいる途中だが、登場人物一人一人の境遇を丁寧に読み進めようと、文庫の下巻に入ってから思った。

ストーリーだけを追ったり、ワイドショー的な関心だけで読まないようにしたい。
  

Posted by なみログ at 20:23 | 文学(日本)

2011年12月11日

18番ホール (横山秀夫)


短編集『真相』に入っている『18番ホール』は、地方の小さな市長選挙に立候補した、若手の県職員の話だ。

タイトルから連想するゴルフに関するミステリーかとおもいきや、全く違う選挙にまつわる人間模様の話で、またしても横山秀夫氏の心理描写の巧みさに、ぐいぐいと引き込まれてしまった。

ミステリーのオチは、あってもなくてもいいくらい、小説としては出来上がっている。仮に事件がなかったとしても、成立するだろう。もちろん事件があり、真相があるから、主人公の置かれた立場はより切実な、緊迫したものになり、人間性があらわになる。
横山氏の小説は、追い詰められた人間が、どのように振る舞うか、隠された人間性をあばきだすような意図があり、我々読者にも少なからずそういう境遇に置かれたときにどうしてしまうのかを考えさせるところがある。


  

Posted by なみログ at 21:39 | 文学(日本)

2011年11月29日

陰の季節 (横山秀夫)

陰の季節 (文春文庫)

陰の季節 (文春文庫)

著作者:横山 秀夫

出版社:文藝春秋

価 格:500 円



今朝、なぜだか、横山氏の短編集を数年ぶりに鞄に入れた。

マフラーと手袋が必要な季節になったからか。

太陽がまぶしい朝より、薄暗く冷え込む朝の方が、警察小説は似合う。と思う。

パンと牛乳。公衆電話。電信柱。煙草の吸殻。

そんなイメージの刑事はこの短編には出てこないが、どの短編も面白い。

  

Posted by なみログ at 19:11 | 文学(日本)

2011年11月27日

立松和平 自選短編集


駒込図書館で借りてきた。

立松和平氏というとニュースステーションで金曜日に全国各地から中継レポートしていた姿を思い出す人が多いだろう。
遠雷という小説があり映画にもなっているが、映画はみたことある人もいるだろう。

永島敏行(だったよな?)。ジョニー大倉。

ジョニー大倉がいい演技していた。

もちろん小説も読んだ。好きな小説である。

ということで、立松和平を借りてみた。
さてさて、どんな小説との出会いがあるか楽しみだ。

  

Posted by なみログ at 23:08 | 文学(日本)

2011年11月21日

月のしずく (浅田次郎)


今朝、浅田次郎氏の短編を読んでいて、都営三田線で芝公園で下車するのを忘れてしまった。

三田で慌てて下車し階段を降りて反対に向かう電車に乗った。

浅田次郎氏の小説はたしかに物語ができすぎてる感じがするがよく書かれている。


  

Posted by なみログ at 23:34 | 文学(日本)

2011年11月19日

角筈にて (浅田次郎)

短編復活 (集英社文庫)

短編復活 (集英社文庫)

著作者:赤川 次郎

出版社:集英社

価 格:840 円




集英社文庫にある、『短編復活(集英社文庫編)』

この中に収められている、浅田次郎氏の、『角筈にて』という短編が良い。

予定調和的にすすむ物語なんだけど、それはそれでいいと思う。そういうラストを求めて読んでいる自分がいるわけだし。

また、この短編集の、志水辰夫氏の『プレーオフ』もいい。

どちらも、企業勤めのサラリーマンにお薦めの小説だ。  

Posted by なみログ at 18:21 | 文学(日本)

2011年10月31日

沖で待つ (絲山 秋子)





数年前に読んだ、芥川賞受賞作の「沖で待つ」の感想を少し。

あらすじは、他のサイトにまかせるとして、読者の関心事のひとつは、
沖で待つ、という太っちゃんのあの詩がだれに向けて書き残されたものなのだろうか、ということである。

「俺は沖で待つ
 小さな船でおまえがやって来るのを
 俺は大船だ
 なにも怖ろしくないぞ」

この詩は死んだ太っちゃんが、妻の井口さんに書き残した詩のいくつかとともに一緒にノートに書き残されていた。

井口さんに書き残された詩を見せられた太っちゃんの同期だった及川(女性)が、沖で待つ、の詩を見たときに、自分に向かって書かれていると、果たして察したのかどうか。。

察したと思う。

というのがなみログの見解。

だれに向かって書かれたかということを知りたいというのもそうだが、それよりも、及川自身が察したかどうか、ということと、妻の井口さんはどう思ったか、というのが文学的に考えてみる価値のあるところで、

例えば、
及川が自分に書かれた詩だと察した上で、井口さんから、このノートどうしたらいいと思う?と訊かれたときに、迷うことなく、大切にしておけばいいじゃないですか、と言ったとすると、その神経は、相当図太いものがあると思うし、そういう意味でこの小説の肝とも感じる二人のやりとりを、こうもさりげなく書いてしまう作者の感覚は会話以上に敏感な感性だ。

新しい男女関係の形とか、同期愛などとキーワードを用いて批評するだけにとどめるには、もったいない小説だと思う。
  

Posted by なみログ at 18:26 | 文学(日本)

2011年10月11日

月と蟹 (道尾秀介)




〜2011年1月のノートより〜

直木賞受賞作、月と蟹を読んだ。

小学五年生が主人公のわりに、心理描写や地の文が大人すぎて違和感を少しは感じるが、文章も巧みで、ストーリーもよかった。

タイトルの月と蟹、子どもたちが崇め立てるのはヤドカリで、月と蟹というタイトルより、ヤドカリに引っ掛けた別のタイトルでもよかったか。

もっと短くて、100枚〜150枚くらいの短編だったらどうだろうと思ったりもする。
宮本輝の短編のように。

いや、そんなに宮本輝を読んでいるわけではありません。(汗)

  

Posted by なみログ at 19:08 | 文学(日本)

2011年10月08日

哀しい予感 (吉本ばなな)




〜2003年6月のノートより〜

読書会で取り上げた。
彼女の書く初期の小説は、感性がみずみずしく、ノスタルジックな印象を与える。読書会に出席した60代の女性は、「哀しい予感」をとても面白く読んだと言われ、この歳になると気持ちがみずみずしいものを受け入れるようになるのかな、と言われた。そんな風に年齢差を超えて親しまれる作品をうらやましいとさえ思う。

さて僕の感想だが、ストーリー展開に唐突感があった。急なドラマを見せられているような感じ。おばを探しに青森まで行くのだが、あっけなく姉が見つかってしまう。あまりにも偶然すぎて、現実味に欠ける。そういう意味では前半が面白いし、登場人物の個性がよく描けている。おばの人物設定はとても効いている。

「哀しい予感」とは何に対する予感なのだろうか。弥生が自己を確立するために、避けてはとおれない「家族の解体」。その哀しさを予感するものだろう。たしかに家族は解体するのだろうが、この小説の後味の良さは、そこに光があるからだ。育ての両親の弥生に対する深い思いや、彼等に対する弥生の素直な気持ち。暗さはない。

ただ、物語の底を流れる哀しさ、残酷さ。僕はそこを考えていたのだが、物語を巡って一つの解釈をしてみたい。それは両親が死ぬことになった青森の最後の旅行は、そもそも一家心中をする目的ではなかっただろうか、という解釈だ。一家心中のために向かった旅行の途中で、不慮の事故に遭遇し、両親は亡くなる。残されたのは姉と妹。妹は血のつながりもなにもない夫婦に預けられ、事故のショックから本当の両親のことについては何も覚えていない。姉はそれまでの生活環境を変えることができないという理由から、一人で暮らすことを選択するが、その裏に隠された思いは、両親と一緒に死ぬことができなかったことに対する複雑な思いが、彼女を一人にさせたのではないだろうか。
ひねくって考えすぎているかも知れないが、そういう感じがいたるところにする作品である。

  

Posted by なみログ at 17:51 | 文学(日本)

2011年10月05日

裸の王様 (開高健)





〜2008年のノートより〜

※ネタばれ注意!!!オチを書いています!!!


家のパソコンの横に本棚があり、開高健の裸の王様の文庫が目にとまった。

パラパラとしてみる。

赤ペンで書き込みが。

裸の王様と裸の王様の二重の仕掛け。

なんのことやらすぐには思い出せない。

あ、そうか、

裸の王様を題材に読書感想画を描かせたところ、ふんどしをしめたちょんまげ姿の裸の殿様を描いた少年が出てきたということと、

その少年の作品を見もせずにほかの作品を優秀賞にした審査員たちのふしあなを、見抜いたということ

二つの側面で、<裸の王様>がしかけられている。

オチがみごとに構成された小説だ。

でも、と思う。

小説にオチはかならず必要なのかと。

開高健のこの作品の完成度は相当高いと思う。

実際に読んでみてもらえばわかるが、実によく書かれている。

でも、と思う。

できすぎてやしないかと。

どこか道徳的であり、教科書的であり、解釈もわかるし、巧みだとは思うが、

それ以上の訴えてくるものがないような気がするのだ。
  

Posted by なみログ at 18:04 | 文学(日本)