2012年03月07日

眉山(太宰治)

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)

著作者:太宰 治

出版社:新潮社

価 格:540 円



2002年9月に書いた独読日記から再掲。

『眉山(太宰治)』※グッド・バイに収録されている。

眉山とあだ名をつけられた飲み屋の女中。主人公である僕たちが飲み屋に行く度に、彼女はかいがいしく彼らの世話をするが、彼たちが呼びもしないのに、彼らの輪の中に入り、いつのまにか話しに加わってしまうことや、どこかピントのずれたその様子に、僕たちは彼女を嘲りの目でも見つめている。
物語の終り、久しぶりに飲み屋にいったというある人物と僕は出会い、眉山がいないことを聞かされるが、眉山が腎臓結核を患っていたこと、彼女がかいがいしく振舞う姿にどこかぎこちなさを感じたり、おしっこをもらしたことがあったということなどが、全て腎臓結核のせいであったということを知らされる。
短くて、本当にあった話を下敷きに書かれていると思う小説だが、文章のうまさもさることながら、最後になって眉山の病気の真相が伝えられたときの僕の心象など、さらっとした表現のなかにも胸を打つものがある。


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Posted by なみログ at 06:39 | 文学(日本)