2011年12月11日

18番ホール (横山秀夫)


短編集『真相』に入っている『18番ホール』は、地方の小さな市長選挙に立候補した、若手の県職員の話だ。

タイトルから連想するゴルフに関するミステリーかとおもいきや、全く違う選挙にまつわる人間模様の話で、またしても横山秀夫氏の心理描写の巧みさに、ぐいぐいと引き込まれてしまった。

ミステリーのオチは、あってもなくてもいいくらい、小説としては出来上がっている。仮に事件がなかったとしても、成立するだろう。もちろん事件があり、真相があるから、主人公の置かれた立場はより切実な、緊迫したものになり、人間性があらわになる。
横山氏の小説は、追い詰められた人間が、どのように振る舞うか、隠された人間性をあばきだすような意図があり、我々読者にも少なからずそういう境遇に置かれたときにどうしてしまうのかを考えさせるところがある。




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Posted by なみログ at 21:39 | 文学(日本)