2011年10月07日
闇の奥 読了
地獄、地獄だ!
アフリカの奥地で重篤な病のために捕らえられ護送されるクルツという象牙商人の最期の言葉である。
かれはジャングルの中で原住民たちから偶像崇拝されモラルと人間性の破綻した暴虐のかぎりをつくしていたのだが、大地奥深く人知の知れぬ闇黒の中で、原始欲望になかばかれ自身さえも征服されてしまう世界というか、小説のなかでは荒野とかかれているが、そのような荒野において、果たして、われわれが世界だと思い過ごしている世界とはなんなのだろうかという問いをいだかずにはいられない。いったいわれわれがあたりまえにみにつけている人間性とはなんなのだろうかと。
1899年に書かれたこの物語の語り手であるマーロウは、闇の奥からの帰還後に見たフランスパリの墓場のような都会に、強い嫌悪感を抱く。互いに零細な金をくすね合い、くだらない、愚かな夢を見ている群集にだ。
地獄、地獄だ!
と吐き捨てられた言葉の先にあったのは、果たしてアフリカの闇の奥のことだったのか、文明都市のことだったのか。
コンラッドがクルツに吐かせたときから、もう100年以上が経つ。
◆闇の奥に関して書かれたサイト
闇の奥(ウィキペディア)
地獄の黙示録(ウィキペディア)
『闇の奥』の奥(藤永茂著)
「『闇の奥』の奥」について書かれたサイト
http://www5b.biglobe.ne.jp/~madison/mondo/m_04/m04_1.html
Posted by なみログ at 22:25 | 文学(外国)