2011年10月17日
赤目四十八瀧心中未遂 (車谷長吉)

この二、三年で一番面白かった本が、赤目四十八瀧心中未遂だ。
かなり面白い。
東京の広告代理店の第一線で活躍していた私が、仕事を辞め、身を隠すように関西の尼崎のある路地に逃げ込み、そこでひっそりと暮らす日々を描いた小説。
ひっそりと、とは書いたが、小説でも書かれているが、私には帰るところがあり、その路地にとって、私はいわば傍観者である。
そして、私は意図をしてその路地にひっそりと住むことを決意しているが、その路地に住むほかの人々は毎日の生活に観念的な解釈はもちろんない。目の前の一日一日をまっくろになって生きるだけだ。
そんな傍観者である私にとって、その路地はときに手厳しくあたる。
子供もそうだ。
解説にも書いてあるとおり、路地の子供の立場。秀逸だ。本当によく書けている。
そして、最後の章。
アマ(尼崎)を離れてから4年が過ぎ、大阪への出張の折に、路地を再訪するのだが、そこにはもう知り合いのおばさんの店はなく駐車場と化し、身を隠すように住んでいたアパートの二階にはだれも住んでおらず、私が住んでいた部屋には南京錠が掛っている。
この章はあらためて読んでも、つらいなあ。
いつかきた青春の終わりを見せられているようで。(苦笑)
読んでいない人はぜひ。
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Posted by なみログ at 18:39 | 車谷長吉