2011年10月12日
太市 (水上勉)

この短編アンソロジーの中に収録されている、水上勉の「太市」。
これは、一読をおすすめする。これまでも、多くの価値感を脅かされる文学作品に出会ってきたが、この短い物語の中に、何ともいえないせつないというか、もの悲しさと、また、怖ろしさを感じる。
車谷長吉氏と水上勉氏の対談が掲載してある本のなかに、車谷氏が「太市」を読んで凄い小説だと思ったということを告白しているのだが、まさにそのとおりだなと思わせる作品だ。
多くの人に「太市」を読んでもらいたいと思う。
似たような感慨を抱いた小説に、イギリスの作家アラン・シリトーの「フランキー・ブラーの没落」という短編がある。フランキー・ブラーの没落を何度も読んでいたからこそ、太市の話が、予定調和的に悲しみを誘発したのかもしれない。
Posted by なみログ at 08:42 | 水上勉