2011年10月03日

砂の器(松本清張)



松本清張の『砂の器』上下巻を読了した。

映画を改めて見直してから、本編の感想は書きたいが、まずは小説の感想から。

ゼロの焦点を読んだあとに読んだ比較では、筋立ておよび文章、ともに砂の器が勝っていると思う。

砂の器というタイトルはものすごく文学的、芸術的であると感じるが、小説自体はあくまで推理小説であり、松本清張の試みも、それ以上のものはなかったのではないだろうか。

もちろん砂の器というタイトルが暗示するごとく、殺人を犯した犯人は、自らの名声、地位が砂で作った器のごとく、もろくも崩れ去るのだが、果たしてかれの人生は、他人が砂の器だと軽んじて非難してしまっていいようなものだったのかどうか。情状の余地があると、最後の説明の文章に何度かでてくるが、おそらく読む人にとって多少の印象の違いはあるにせよ、極悪犯には写らないのではないか。和賀という人物の様子は、小説の中では関川というもうひとりの容疑者よりも、人物像が薄くしか描かれておらず、和賀という人物の本当の、真実の言葉はどこにも書かれていない。果たして和賀という男はどのような人物だったのか、読む側に幾通りもの想像の余地を残した人物像である。

砂の器〈上〉 (新潮文庫)

砂の器〈上〉 (新潮文庫)

著作者:松本 清張

出版社:新潮社

価 格:660 円




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Posted by なみログ at 15:17 | 松本清張