2011年11月13日
雁の寺 (水上勉)
海外文学はドストエフスキーに、日本文学は水上勉にはまっている。
水上勉氏の代表的作品である、雁の寺、越前竹人形の入った文庫を買い求めて読んだ。
この二作を収録した文庫本は、今後何度となく、間違いなく再読するだろう。それくらいのどちらの作品も名作だ。
とくに「雁の寺」は、全体を通して不必要な部分がなく、文章もしまっていていい。
(谷崎潤一郎氏がエッセイで、越前竹人形の水上勉氏の作品を褒めているが、それでも文章については、どちらかというと平凡でややたどたどしい、と書いているが、雁の寺にしても、越前竹人形にしても、十分ではないかとぼくは思う。)
名作といわれる小説なので、多くの人が批評し、読後感も発表しているので、ぼくなりの感想だけを一つ。
カラマーゾフの兄弟で、一番気になる人物として僕は、スメルジャコフを上げた。
雁の寺の主人公である慈念の、出生のこと、置かれた境遇。なんとなく通じるものを感じた。
椎の木のてっぺんに見た、鳶が作ったほの暗い穴。慈念もスメルジャコフも、同じような、ほの暗い穴を見てしまった人間ではなかったか。