2011年10月27日
スメルジャコフという造形
ドストエフスキーは恐ろしい小説家である。
罪と罰、悪霊、カラマーゾフの兄弟と、続けて読んできて思うのは、登場人物の造形の力だ。
罪と罰、悪霊ともに、実際の事件に触発されモチーフにして書かれているが、それにしても、物語に出てくる人物造形の力は凄い。
リアルの人物以上に、より人間的に造形されているのではないかとさえ思う。
一人の人間の魂や性格、心の動きの深淵を、極端から極端までを披露することが、この小説家の真髄なのだろうと思う。
そして、カラマーゾフの兄弟で造られた「スメルジャコフ」という召使の男。
この男の出自、幼少期、青年期、恋愛、自殺に至るまでの全てを、この男の魂の声とともに理解しようとすることの試みが、ひょっとすると、カラマーゾフの兄弟を読むことの最上の挑戦すべき目標なのかもしれない。
※かつて村上春樹さんのサイトに『バー・スメルジャコフ』というコーナーがあったという。
Posted by なみログ at 12:30 | ドストエフスキー